ベクトルで考えよう

自分が歴史好きで歴史を自発的に学んでいたりすると
学校での歴史教育であったり、ビジネス書で表現される歴史事実だったり
というのに一つ非常に気になるところが出てきます。

それは、歴史というものを「ある時点での制度や社会構造のスナップショット」と
「ある特定のイベントの原因と結果」というスポットでとらえている点です。

しかし、現代社会を見てもらえればわかるとおり、社会構造というのは常に変動しています。
それをスナップショットでとらえる事が、さほど重要だとは思わないのです。

スナップショットで物事を正確にみようとすると、
それこそ膨大なスナップショットを必要とします。
結果として知識の詰め込み型の歴史教育が出来上がり
歴史嫌いを生み出しているように感じています。

例えば、今年の大河ドラマの舞台となっている平安末期。
平安末期から鎌倉時代初期までの100年間の政治体制を
スナップショットで把握しようとすると
実に9パターンもの政治体制を把握しないといけません。

①白河院政期(~白河帝薨去 1129年)
②鳥羽院政期(~鳥羽帝薨去 1156年)
③保元新制期(~平治の乱 1159年)
④二条親政期(~二条帝薨去 1165年)
⑤後白河院政期(~治承三年の変 1179年)
⑥平家政権期(~源義仲入京 1183年)
⑥治承寿永の乱(~平家滅亡 1185年)
⑦第二次後白河院政期(~後白河帝薨去 1192年)
⑧摂関家復活期(~後鳥羽院政開始 1197年)
⑨後鳥羽院政期(~承久の乱 1221年)

まあ、それだけの事を覚えることは出来ないので
代替以下のようにまとめられちゃいます。

①院政期(~平治の乱 1159年)
②平家政権期(~平家滅亡 1185年)
③鎌倉幕府(~鎌倉幕府滅亡 1333年)

こんだけ省略してしまえば歴史の流れは追えません。
結果として、実に誤った歴史認識に基づいて
さも偉そうに歴史について語るビジネス書が増えるわけです。

しかし、ビジネスについてはまともの事を言っている人でも
どうして歴史の事になるとトンチンカンになる人が多いんでしょうかね。


で、僕が提案したいのは、歴史をスナップショットで見るのではなく
ベクトル、つまりは目指す方向性で見ようという事です。

それぞれの勢力は、それぞれのビジョンを持って行動しているわけで
それぞれのスナップショットは、その一時的な状況にすぎません。
以下のようにベクトルを整理すると極めて分かりやすいんじゃないでしょうか?

天皇家:治天(上皇)を一番の権力者として、院政によって国家を統治する。
摂関家:これまでの荘園と受領を基盤として律令制の中で官位を独占する。
その他貴族:摂関家にとって代わりたい。
在京武士:貴族社会に分け入って成り上がりたい。

関東武士:関東に独自の政権を築きたい。
奥州藤原氏:奥州に独自の政権を築きたい。

これらのベクトルで、それぞれが強くなったり弱くなったりしているわけです。
大事なことは、その時代にどういった集団があって、何を求めていて、何をして
結果としてどうなったかという時間の変遷を中心軸に据えた歴史認識だと思っています。
でもって、最終的に関東武士が勝ち残って鎌倉時代が到来したわけですね。

摂関家は保元の乱で権力を失う
平家は1185年に壇ノ浦で滅亡
奥州藤原氏は1187年に滅亡
源将軍家は1219年に実朝暗殺により断絶
天皇家は承久の乱で権力を失う
その他武士・貴族は結局、力をつけられず

という流れですね。
藤原道長によって完成された摂関家を中心とした政治構造は
院政期を経て、結局は北条氏による鎌倉幕府で一応の安定を見たわけです。

でもって、その後は鎌倉時代末期に不安定化した社会は
長い混乱期を終えて江戸時代に再び安定するわけです。
室町時代はと思うかもしれませんが、僕は室町時代は安定した社会だとは思っていません。
だって、1399年までは南北朝の騒乱があって、1467年には応仁の乱です。

室町時代の特に関東がどれだけ騒乱の時代だったかというのは
「関東の独立運動とか知られると皇国史観が揺るぐから教えなくていいよ」
という暗黙の了解によって闇に葬られているので
一度整理してブログに書きたいなと思います。

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