ウィリアム・H・マクニール著 『世界史(上)』

ここんとこ長距離移動が多かったので
移動のおともにと思って購入した本です。
最近、日本史に興味が偏りがちだったのですが
日本を知るにはやっぱり世界史を知らないと
どうしても日本視点になってしまうので
もう一度世界史を学びなおすために買いました。

本の売り文句が「東大・早稲田でNo1」とあり
現役の学生たちに読まれている本というのも
僕の興味をそそりました。

僕の個人的な見解としては歴史を俯瞰的に知る場合には
こういった古典作品(この本は1967年著)から入るべきであり
ここ数年に出版されたような新書系の「そうだったのか!日本史」
みたいな本はたいがい現代の世相が反映されすぎていて
売れるために事実を誇張したり、故意に伏せたりと言う事が多く
謝った知識にを身につける恐れがあるので避けた方がいいと考えています。

ということで旅のお供に読んでいた、この世界史です。
まだ上巻だけしか読み終えていませんが、その時点での感想になります。

まず、やはり東大で売れているだけあって世界史を浅く広く学ぶには最適です。
ヘレニズム文化の仏像に与える影響であったり、遊牧民の活動に対する言及であったり
どうしても東洋史、西洋史、インド史と言った形で区切られがちな世界史を
ユーラシア史という概念で俯瞰的に見て、網羅的な記述がなされていました。

一方で、この著作が1960年代に記されていただけあって古い歴史認識もみられました。
農耕民族こそ「文明社会」と定義し、遊牧民族を「未開」とさげずんでいたり
これまでの歴史上の出来事に対してヨーロッパ社会を積極的に受け入れて発展し
中国やインドは拒否的な反応を示して停滞したという価値観を持ってしまっています。

ここらへんは著者が欧米人であり、生まれ育った時代は正に欧米が中心の時代でしたので
どうしても現代社会の基盤となっているヨーロッパのキリスト教社会を好意的に描画し
それらに打倒された中国、インドの社会を過小評価してしまうのは仕方のない事です。

アジアの中では欧米と対応にやりあう事の出来た日本をやはり高く評価しているのですが
日本への知識が不足していますので、鎌倉時代と江戸時代を「武士の時代」として同一視し
武士の価値観を江戸時代の朱子学の影響下に確立された武士道に基づいて評価してしまい
禅の伝来などに対する評価を武士道的価値観から説明してしまっていました。

まとめると、この書籍は世界史を忘れてしまった人が学びなおす1冊目としては最適ですが
なにせ半世紀前の書籍ですので、この内容をベースに世界史を認識してしまうと
ヨーロッパ人には受けがいいかもしれませんが、アジアやイスラム世界については
古臭い価値観を持ってしまいかねませんので、東洋史だけは日本人が記述した新しい書籍
たとえば同じ中公文庫の「中国世界の歴史」や「世界史シリーズ」などを読んで
歴史認識をアップデートした方が良いと思います。

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